将棋の第26期竜王戦七番勝負は3勝1敗で迎えた第5局(11/28、29)を挑戦者森内名人が渡辺明竜王を破りタイトル奪取。
< ↓ 投了図 先手3八金まで >
森内さんが7大タイトルの中でも別格の名人位と竜王位を独占した。完全なるチャンピョンである。棋界最後の竜王名人も9年前の森内さん。その森内さんから竜王位を奪取したのは渡辺さんでそこから9連覇しており、竜王戦での渡辺さんは圧倒的な強さがあった。4年前に森内さんが挑戦したときは4連敗と完敗だった。
今期の竜王戦直近の10局でも1勝しかしていなく相性も極端に悪く思われた。年齢的にも森内さん43歳で(渡辺さんは29歳くらい)、挑戦者になること、さらに渡辺さんから奪取することは無理だと思っていた。
だが、渡辺さんの不調もあったかもしれないが、森内さんは将棋の内容もほぼ完璧で他の棋士もそれを上回るとも言われるソフトの示す手を超えるような手を指し続け完勝した。
今期の森内さんは春に名人戦を4勝1敗で挑戦者の羽生3冠をも退けて防衛しており長時間のタイトル戦では無敵状態だった。
近年、2日制の棋戦は長時間で時代に合わないとかいう意見もあるが、森内さんの実力が十分に発揮される2日制の価値が再認識できた。
森内さんは近年は11連敗したり、名人になっても年間勝率を4割を切ったりすることもあった。なぜ今期ここまで復活したのか?いろいろ要因はあるだろうが、一つはこの年齢でも更に上を目指し、棋風改造を行ったためである(藤井九段も言及)。数年前の不調期は過渡期であったのである。森内さんといえば「鉄板流」と言われる相手の攻めを手厚く受けるのが有名だが、本人はそのように言われるのをよく思っていないらしい。最近ではギリギリで相手の攻めを見切って、絶妙なタイミングで反撃にいくことが目立つ。
同世代のスーパースター羽生三冠の他、佐藤九段、丸山九段、郷田九段、藤井九段、先崎八段らが若い頃から活躍する中、遅れて実力を発揮し名人まで登りつめた。そして、さらに上を目指し、結果がすぐに出なくても粛々とモデルチェンジを実践、成功させ、それでも謙虚で誠実であり続ける。こんな人間に私もなりたい。
また、渡辺さんも20歳から一人で羽生世代と戦い続け、竜王位を9連覇したことはもちろん、今シリーズの挑戦者森内さん得意の相矢倉戦から逃げなかったことに感銘を受けた。もう一般人には十分すぎるほどの賞金を稼ぎ、多趣味、多才な渡辺2冠だが、また竜王、名人を本気で狙って欲しい。